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リモート廃止で辞めたいエンジニアへ|収入と家族の時間を守る働き方の選び方

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シンプルな人物画で、リモート廃止後の働き方を収入と家族の時間から考えるエンジニアを描いたアイキャッチ

朝、全社向けの通知が届きます。 「来期から、出社を基本とする働き方に戻します」。

画面を閉じたあと、頭の中で計算が始まる。

「朝の送りは、これから誰が行くことになるんだろう」 「定期代は出るとして、昼ごはん代は毎日かかるよな」 「この数年でやっと回るようになった生活が、また振り出しか」

こんな声が頭をよぎった人もいるでしょう。 どれか一つでも当てはまったなら、「辞めたい」と思うのは自然な反応です。 わがままでも、根性が足りないわけでもありません。

僕は会社員時代、ぎゅうぎゅう詰めの電車で通っていました。 揺られながら毎朝「仕事に行きたくない」と考え、満員の車内で「このまま50歳までこの繰り返しなのかな」と思ったこともあります。 それでも、通勤のない暮らしから満員電車へ戻ると聞かされたときの重さは、想像がつきます。

ただ、その重さのまま退職届を書くのは早い。 辞めたいと感じたら、まず通知の中身と生活への影響、会社で調整できる余地を具体的にします。 そのうえで在職中に、「今の会社で調整する」「正社員で転職する」「フリーランスになる」の3つを同じ条件で比べる。 フリーランスの勤務条件も案件しだいで変わるので、どれかを選べば安泰という話にはなりません。 比べて選んだ働き方なら、条件がまた変わったときにも、選び直すための表が手元に残ります。

目次(クリックで読みたいところから読めます)

リモート廃止で、生活の何が変わるのかを整理する

リモートで働いた数年のあいだに、生活はテトリスのように組み上がっています。 起きる時間、朝の家事の分担、夕方の予定、週末にまとめていた用事。 どのブロックも、「平日も家にいる」という一番下の段の上に積まれています。

出社に戻るというのは、その一番下の段の形が変わる話です。 上に積んだものが、まとめてずれる。 だから「通勤がつらい」の一言では、何がどう困るのかが家族にも会社にも伝わりません。

通勤・家族との時間・家計への影響を書き出す

最初にやるのは、感情を条件に置き換える作業です。 下の表の空欄を、自分の数字と事情で埋めてみてください。 表は書き込み用の雛形で、例として何かを記入したものではありません。

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項目 現在 変更後 困ること 確認したいこと
出社日数(週)
支度・往復通勤にかかる時間(1日)
家族で分担している時間(送迎・家事など)
追加でかかる費用(交通費の自己負担分・昼食など)
就業時間(始業・終業・コアタイム)

支度・往復通勤にかかる時間は、勤務時間を除き、朝の支度と自宅から職場までの往復移動を合計して書きます。 週の合計は「1日分の支度・往復通勤の時間×出社日数」で出せます。 1日なら我慢できそうな数字も、週や月に直すと重さが変わります。

出社増で変わる通勤・外出時間、家族との時間と分担、家計の追加費用を整理する図
タップで画像を拡大

上の図は、表の5行を「時間」「家族」「お金」の3つにまとめ直したものです。 困りごとがどこに集まっているかで、次に確かめることが変わります。

不満の中心が出社そのものか、生活が合わなくなることかを分ける

表を埋めると、「辞めたい」の中身が少しずつ割れてきます。 自分に近いものを選んでみてください。

  • 週に1〜2日の出社なら、今の生活のままこなせる
  • 出社でも、始業と終業を1時間ずらせれば回る
  • 家族の事情で、平日の在宅が欠けると家庭が回らない
  • 生活は回せるが、通勤に使う時間そのものがもったいない

どれを選んでも間違いではありません。 全員にとってフルリモートが正解、という話でもない。 ただ、選んだ答えによって、取るべき行動ははっきり分かれます。 上の2つなら会社との調整で解決する可能性があり、3つ目なら勤務場所の条件そのものが外せない線になります。

出社回帰をきっかけに働く場所を考え直す人は、少なくありません。 レバテックの調査では、現在リモートで働いているITエンジニアに、勤務先が出社回帰の方針を打ち出した場合のキャリアへの影響を聞いたところ、43.7%が「同じ職種での転職を考えるきっかけになる」と答えています(複数回答)。

転職を考えるのは珍しい反応ではありません。 ただ、それが自分にとって正解かどうかを決めるには、まだ材料が足りません。

らんこ

“通勤がつらい”を“何時に帰れれば回るか”に言い換えると、相談しやすくなりますよ

辞める前に、会社で変えられる条件を確認する

「出社を基本とする」と通知に書いてあっても、自分のチームに、いつから、どこまで適用されるのかまでは読み取れないことがあります。 中身がわからないまま辞めるかどうかを決めるのは、見積もりを見ずに引っ越し業者を決めるようなものです。

いつから・誰に・週何日の出社が必要なのか

まず、通知と実際の運用を分けて確かめます。

  • いつから出社が必要になるのか。移行期間はあるか
  • 全社員が対象なのか、部署や職種で違うのか。自分のチームでは実際どう運用されるのか
  • 週に何日か。曜日は指定されるのか、自分で選べるのか
  • 出社する場所は本社だけか、別の拠点も選べるのか
  • 申請すれば在宅を続けられる制度や、試行期間はあるか
  • 始業と終業の時間、フレックスやコアタイムは変わるのか

就業規則、雇用契約書、通知の文面で勤務場所がどう書かれているかを見ておくと、会社に聞くことが具体的になります。

廊下で聞こえてくる「どうせそのうち緩くなるらしいよ」という話は、判断の材料に入れません。 決めるのは、いま会社が示している条件だけです。

なお、命じられた出社に従う必要があるのかといった法的な判断は、ここでは扱いません。 会社の説明に納得できない場合は、人事の窓口のほか、厚生労働省の総合労働相談コーナーのような公的な相談先もあります。

出典

出典:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(労働問題全般を対象に、無料かつ予約不要で相談できる窓口として案内されています)

出社曜日・勤務時間・部署の調整を相談できるか

中身がわかったら、調整を相談できるかを確かめます。 ここで差が出るのは、伝え方です。

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伝え方 例
NG:制約だけを伝える 「週3日の出社は無理です」
OK:制約と案をセットにする 「火曜と木曜は18時に退社する必要があります。出社日を月・水・金にまとめることはできないでしょうか」

制約だけを伝えると、会社は代わりの案まで自分で考えなければなりません。 案があれば、会社も実現できるかを検討しやすくなります。 相談すれば通るとは限りませんが、可能なことと難しいことを確かめる材料になります。

返ってきた答えは、その日のうちにメモに残します。 決まったこと、まだ決まっていないこと、いつまでに返事をもらえるか。 そして、再確認する日を自分で決めておく。

すぐに辞めるか、黙って我慢するか。 選択肢はこの2つだけではありません。 「期日を決めて保留する」という3つ目の箱を持っておくと、焦りで決めずに済みます。

らんこ

“そのうち緩くなるらしい”は、まだ条件じゃありません。メモに残すのは決まったことだけ

現職の調整・転職・フリーランスを同じ条件で比べる

乗換案内のアプリは、いくつかのルートを、所要時間、運賃、乗り換え回数という同じ物差しで並べてくれます。 一本のルートしか表示されなければ、それが早いのか遅いのかは判断できません。

働き方も同じです。 「辞めたい」の勢いで一つの道だけを見ていると、良し悪しを測りようがありません。

収入・出社・勤務時間・条件変更の余地を並べる

下の表は、比べるときに見る項目を整理したものです。 どの働き方が有利かを採点したものではありません。 最後の行の「不足情報」は、自分で調べて埋める欄です。

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項目 現職で調整 正社員で転職 フリーランス(業務委託)
収入の確認対象 今の給与と賞与。出社に伴う手当や費用の扱い 提示される給与、賞与、各種手当、制度を含めた条件 月の報酬(単価)から、経費、税金、社会保険料を自分で払った後に残る額
出社実態 調整の結果しだい 求人の表記と、配属先チームの実際の運用 案件ごとに違う。同じ現場でも契約形態で扱いが異なることがある
時間拘束 現在の就業規則と調整の結果 入社先の就業時間、フレックスやコアタイムの有無 案件で決まる稼働時間、コアタイム、定例会議
変更リスク 会社の方針が再び変わる可能性 入社後に方針が変わる可能性 案件の方針変更や、契約が更新されない可能性
不足情報
現職調整・正社員転職・フリーランスを、収入・出社・勤務時間・変更リスクで比較する図
タップで画像を拡大

上の図は、表の4行を物差しとして並べ直したものです。 3つのうちどれが良いかは、最初の表で書き出した困りごとによって変わります。

いちばん間違えやすいのは、収入の行です。 正社員の給与と、フリーランスの単価は、同じ物差しに乗りません。 業務委託の報酬からは、経費、税金、社会保険料を自分で払います。 単価の数字を見て「給料の倍だ」と喜ぶのは、運賃を見ずに所要時間だけでルートを選ぶのと似ています。

単価から生活にいくら残るのかは、フリーランスエンジニアの手取りの考え方で整理しています。

僕は単価とフルリモートを重視して案件を選んでいる

僕は32歳のとき、会社員からフリーランスになりました。 いま案件を選ぶときの優先順位は、単価、フルリモート、スキルの順です。

フルリモートより単価が上なのは、ちょっと身もフタもないですよね。 でも、独立した理由がそもそもお金だったんです。 稼げるうちに稼いで投資に回したい、という考えは会社員時代から変わっていません。 そのうえで、通勤のない働き方を2番目に置いています。

いまの参画先では、正社員は週2回の出社で、業務委託の僕は出社が自由です。 チームのメンバーと直接顔を合わせるのは、飲み会のときぐらいです。 同じ現場でも、契約の形で扱いが違うことがある、という一例です。 業務委託ならどこでも出社が自由になる、という意味ではありません。

会社員時代の僕は、仕事中も時計をちらちら見て、早く定時にならないかと思っていました。 いまも仕事への嫌な気持ちがゼロになったわけではありません。 ただ、だいぶ軽くなりました。 いちばん大きいと感じているのは、やらされているのではなく、自分で選んで働いている感覚です。

この順番が、誰にとっても正解だとは思っていません。 会社員を続ける人なら、「給与、出社日数、通勤時間」のように、自分の順番を作って同じ表で比べればいい。 何を上に置くかを先に決めておけば、どの働き方も同じ表に乗せられます。

フリーランスの毎日がどんな時間割で動いているかは、フリーランスエンジニアの一日に書いています。

「リモート可」の中身を、応募前と面談で確かめる

転職やフリーランスを比べはじめると、求人や案件の「リモート可」という表記が目に入ります。 この4文字は、入社直後から在宅なのか研修後からなのか、全員が対象なのか一部の職種だけなのかまでは教えてくれません。 表記だけで決めると、出社に戻るのが嫌で転職したのに、転職先でも同じ通知を受け取ることになりかねません。

出社頻度だけでなく、時間・会議・適用範囲を聞く

面談や商談では、次のような点を聞いておきます。

  • 「配属予定のチームでは、実際に週何日くらい出社されていますか」
  • 「入社初日や研修期間中は、出社が必要ですか」
  • 「定例の会議は何曜日の何時ごろにあり、オンラインで参加できますか」
  • 「連絡がつく必要がある時間帯は決まっていますか」
  • 「住む場所や、働く場所に決まりはありますか」

もう一つ、在宅で働けることと、勤務中に家のことができることは別の話です。 在宅でも、就業時間中は仕事をする時間です。 家族との分担を考えるときは、「在宅かどうか」より「何時から何時まで働くのか」で計算します。

らんこ

“リモート可”は、入社直後から?配属チームも?そこまで聞いてOKです

条件が変わる場合の確認先も押さえる

いまリモートで働けることと、この先もリモートで働けることは、分けて考えます。 今回の通知がそうだったように、条件は後から変わることがあります。 それは転職先でも、フリーランスの案件でも同じです。

聞いておきたいのは、次の2点です。

  • 「ここ数年で、出社の方針が変わったことはありますか」
  • 「働き方の条件が変わるときは、いつごろ、どこから知らされますか」

「変わる予定はありません」という答えも、今の見込みであって、ずっと在宅で働ける約束ではありません。 変わったときの相談先がわかっていれば、通知を受けた日に誰へ確認するかを決めやすくなります。

フリーランスも比べる人は、案件ごとの単価の前提や契約条件の確かめ方を、フリーランスエンジニアの案件の選び方にまとめています。

今週は、希望条件と確認先を一つ決めよう

ここまでの比較を全部いっぺんにやる必要はありません。 今週やることは、次の3つで足ります。

  1. 最初に埋めた表を見ながら、「これが崩れたら生活が回らない」という条件を3つだけ書く(15分ほど)
  2. 適用開始日、出社曜日、就業時間のうち、いちばん生活に響くものを1つ選び、会社に確認する
  3. 書いた3つの条件を、そのまま求人や案件を比べるときの物差しにする

15分は、メモに3行書くくらいの量を想定した目安です。

家族と話すときも、この3行と表を見せるのがいちばん早い。 「辞めたい」とだけ伝えると、家族は不安を受け取るだけです。 「出社に戻るとこの時間が足りなくなる。会社にはこれを聞いてみる」と伝えれば、同じ紙を見ながら一緒に決められます。

「家族がいるから、今の会社で耐えるしかない」。 そう思う人もいるでしょう。 家族との生活に関わる判断だからこそ、耐えるか辞めるかを決める前に、ほかの選択肢も比べておきたいところです。 耐える場合も、辞める場合も、ほかの選択肢を見たうえでの判断なら、その理由を家族に説明できます。

そして、どの道を選ぶとしても、次を決めてから辞める順番は崩さないでください。 僕は在職中にエージェントに登録して面談を受け、案件が決まってから退職届を出しました。 在職中に比べれば、条件が合わないとわかっても、今の収入は手放さずに済みます。

フリーランスも選択肢に入れる人は、エージェントに登録して、自分の経験で希望に近い案件があるかを確かめてみてください。 単価、出社の扱い、稼働時間が具体的な数字で出てくると、比較表の空欄が埋まります。 登録したから独立しなければいけない、ということはありません。 家族持ちの目線で比べたエージェントは、30代エンジニアにおすすめのフリーランスエージェント5選にまとめています。

らんこ

まずは3行だけ。外せない条件が決まると、次に聞くことも決まりますよ

通知を受けた日の画面には、会社の決めた条件しか書かれていませんでした。 今週、手元のメモに書くのは、自分の条件です。 その3行を持って会社に聞くか、求人を見るか、案件を見るか。 どこから確かめるかは、あなたの3行が決めてくれます。

シンプルな人物画で、リモート廃止後の働き方を収入と家族の時間から考えるエンジニアを描いたアイキャッチ

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